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【感想】人殺しの論理 凶悪殺人犯へのインタビュー 

 

珍しく本を読んだ。友人が「感想を聞かせてほしい」と言って奢ってくれた。

本を奢ってもらうなんて初めての経験だ。

きちんと読まねばなるまい。と思って読書に臨んだ。

 


人殺しの論理 凶悪殺人犯へのインタビュー (幻冬舎新書)

この本は、フリーランスの記者が死刑囚に拘置所で何度も面会をし、事件等について取材をしていったものの記録である。

 

最初はフリーランスの記者が凶悪事件に関して、大手の記者達もいるなか取材していく事の大変さや、仕事の内容的に加害者側からも被害者側からも恨まれたりする事もある。それでもこの仕事をするのはもはや金の為とかそういう理由では無い。といった内容の事が書かれていた。

 

そりゃそうだろう。一回10分~長くて20分の面会(しかも相手が拒否または死刑が確定したらできなくなる)や手紙のやり取りを気が遠くなるほどの回数繰り返して、

凶悪殺人犯のインタビュー記事を書くなんて、狂気の沙汰にも等しいと思う。

とはいえ、何度もやり取りをしていくうちに相手の人間的な部分が見えてきて

心を通わせられるようになった相手との別れについては悲しいと感じることもあるらしい。

そうだとしても、正直よくやるわ・・・と言わざる負えない。

 

この本で大きく取り上げている事件は以下の5つ

大牟田四人殺人事件

・北九州監禁連続殺人事件

・尼崎連続変死事件

・某県女性刺殺事件

・近畿連続青酸死事件

 

有名な事件もいくつかあるね。

各事件ごとに筆者の取材の流れとか方法とか書かれているけれどそこまで

詳細を書いていくとキリがないからざっくりと概要と感想を。

 

大牟田四人殺人事件

ヤクザ一家(子供も組員)が借金返済の為に知り合いの資産家の家族等4人殺害する事件。実行犯は全て息子。家族全員に死刑が求刑されたことで話題になった。

初っ端で申し訳ないがこの話が一番気分が悪くなった。

後述していく事件と比べても犯人の頭が悪すぎる。

お金が必要→奪おうの短絡的思考がやばい。殺したら捕まるということが一切理解できていない。殺して奪う計画までは立っていてもその後の事が考えられていない。

いやバレるし捕まるだろそんなん。って普通は思うんだろうけど借金を返すってところまでしか思考が及んでいないんだよ。

しかも、お金がない→殺して奪おう→殺したら捕まった→そうか俺は悪い事をしてしまったのか→反省→とはいえ残された人生精一杯生きようと思う。の流れが本当に胸糞悪い。

全てのフェーズにおいて今現在”now”の事だけ。こんな生き物が服を着て人語を話して歩いているかもしれないという現実。怖すぎる。

 

・北九州監禁連続殺人事件

 中年の男女二人が家族を監禁して虐待したり、家族を殺させたりその処理をさせたりする事件。事件規模が大きすぎて正直読んでいても誰が誰で・・・みたいなのが未だに整理できていない。こういう長期間の監禁って、大規模になってなんらかのきっかけがないと発覚しないイメージ。怖くて逃げられなかったりとか、言えなかったりとか、色々あるんだろう。主犯格とされている男のほうは終始落ち着いて様子で、筆者のインタビューの際にも自分が直接命令を下したという明確な証拠がないという強みもあって、頑なに無実を訴えるスタンスを崩さず、味方につけようとしているところが狡猾だと思った。”つい”とか”気づいたら”やってしまっていた。とか、そういうのとは違う。

わかってやっている。そんな印象を受けた。しかもこれ、俺の読解力が低いのかもしれないけれど目的が良く分からないんだよな。金銭はもちろん得ているけれどそれがメインじゃないというか、ただ支配して虐待して殺して隠ぺいして、淡々と生活しているだけなんだよな。ただただ思考が謎。

 

・尼崎連続変死事件

事件自体はニュースで知っていた。角田美代子(当時64)を中心とした角田ファミリーがいくつかの家庭に乗り込んで居座り、親族間で暴力を繰り返させて多額の金銭を搾取した事件。結局、角田美代子が留置施設で自殺、他のファミリーは面会拒否で今回の件はインタビューしたわけではないけれど、仕事にならなくても可能な限り見届けたいとの思いから取材を続けてしまうケースとして、この事件が取り上げられていた。

犯人は子供をまず手なずけ、子供が実質人質に取られているから大人は手出しができず、その中から一人だけいじめる対象を作り、逆らうと自分もこうなるのではにだろうかという恐怖心を他のものに植え付けた。そのうえ暴力団との関係もほのめかしていたので、結果約二年に及ぶ軟禁状態が続いたのだという。

また、この流れの中で被害者の家族の女性が角田ファミリーの一人と結婚をして加害者側に回ったり、事件の概要だけで目が回りそうになる。

この章に関しては、その結婚してファミリーに加わった女性(加害者)とその父親(被害者)の親子愛、そしてその後どう生きていくのか的なところが書かれていた。

この本の所々で書かれていることだけど、別に事件が終わって犯人が逮捕されても、

裁判は続くし殺された人は帰ってこないし、死刑になってもすぐ執行されるわけじゃないから犯人は生きているし、残された家族は忘れられないしで、とにかく”終わり”じゃないんだよな。そういうのを特に感じさせられる章だった。

 

 ・某県女性刺殺事件

これは他の章とは違って、筆者の元に犯人側から手紙が届いた事がきっかけになっている。

だからってわけじゃないが、タイトルもこんな感じになっている。○○事件ってなっているような有名なものじゃないしね。

事件の概要は当時交際相手の女性を包丁で刺して殺害したというもの。

自分の体験を本にして出版したい犯人が、一つ目の「大牟田四人殺人事件」の犯人から紹介されて筆者に手紙を送ってきたという流れだ。

(余談だけど本に書いてあった手紙の文章がめちゃめちゃ丁寧でとても驚いた。こういうのやっぱり大事だな・・・)

 犯罪者が手記を出したいというのはよくあるケースらしい。

 多くは刊行できるレベルじゃないらしいけれど。

犯人いわく、自分は他の人とは結構違った人生を歩んでいるから・・・らしい。

まぁ確かにそりゃ薬キメたり殺人したりとかは万人が体験することではないだろうけど、それで本出すってのはどうなんだろうとは思わなくもない。

結局面会の中で本は無理なので記事にって事に落ち着いた。

内容は昔から少年院に入っていた事。薬の売人のバイトをしていて、元AV女優とシャブセックスをした事。それと今回の事件の事。といった感じだった。

最初の二つは省くとして、今回の事件の部分の原稿について、元交際相手の女性がシングルマザーで、元旦那との関係を断ち切れないまま犯人と交際している事や、それに対する心の乱れ、相手の言動等が事細かに書かれていた。けれど犯行時の様子については簡単な文章が一文あるだけだった。

この部分がやけに印象に残っている。思い出したくないのか、思い出せないのか。

なんなんだろう。やっぱりこう、本能とか深層心理とかで記憶を封印してしまうもんなんだろうか。なんというか、このあっけない感じ。判決の時も犯人はきちんとした言葉で反省の意を述べているし、これまでの事件の犯人と違ってまぁ”普通の人”の枠組みにいるんじゃないかと思ってしまった。

 

・近畿連続青酸死事件

この事件も割と覚えてる。

犯人(筧千佐子)の夫が死亡。体内から青酸化合物が検出され事件が発覚。

今までに犯人と結婚や交際をした男性11人が死んでいた。というもの。

いや、多すぎだろ死んでる人。本には交際や結婚の年表があったけど結婚や交際をしてから死ぬまでが早すぎる。しかも所々重なってるから不倫だし・・・いやすごいわ。

なんで今までバレなかったんだ・・・

まぁ高齢の金持ちを狙っていたからなのかもしれんけど。

 

極刑が予想される裁判の判決言い渡しの際に「耳が遠くて・・・」と裁判長に言ったり(おそらく普通は黙って聞いているのだろう)面会で「死刑」というセンシティブな単語を自ら発したり、筆者曰くこれまで知る殺人犯とは全く違う空気を感じたらしい。

 何度も面会していたが、取材が行き詰まった筆者は最終的に直接本人に自分が取材して得た事実をぶつけた。

結果犯人は激高し、そこで二人の繋がりは途絶えた。

 

結局最後まで本当の事を話さないんだから、どうしようもないよな。

死刑を免れるために嘘をついているんだろうか。

それぐらいしか意味ないよな。

無期懲役と死刑だったら死刑の方がマシだと個人的には思うんだけど

こういう状況に置かれたら人は長生きしたいと思うんだろうか。

 

 

まとめ

奢ってもらわなければ決して自分からは手に取って読むことはないだろうという本だった。いい経験だったありがとう友よ。

本を読みなれてないのもあって、時間をかけて読ませてもらった。

感想も、内容が内容だけにどう書いていこうかよくわからなくて

結果少しづつ読み直しながら書いていく形になったのでこっちも時間がかかった。

遅くなってしまってすまねぇ。

取材の背景とか、ニュースだけじゃ知ることができない一面とかも知ることができて

裏ではこんなこと仕事にしている人がいるのかと見識が広がった一冊だった。